第n次合同企業説明会 マッチングアプリの巻
私の就活は22卒の代だった。
そして時は流れ、2025年。第n次合同企業説明会がやって来た。
3月。まずは就職サイトに登録。滝のように流れてくる企業情報をスワイプで選別していく。気になる企業にはいいねを押してアピール。同時並行で自己PRを作成し、ウケの良さそうな写真も用意。SNSでの情報収集も怠らない。
慣れてきたら具体的な検索条件で絞り込み、自分のビジョンに適合する企業を炙り出す。限られた情報を舐めるように読み込み、粗がないかチェック。「アットホームな雰囲気」…このワードは罠だと知っている。この手のまやかしは全て把握済みである。
しかし手駒が少なすぎるのは戦略として不合格。及第点ならひとまずエントリーが吉。話はそこから。説明会に参加し、疑問点はそれとなく質問。相手の対応を精査しつつ、柔和な態度と適度なユーモアでこちらの売り込みも忘れるべからず。
数々の試練を乗り越え、一次面接へと辿り着く。想定通りの勝利か、はたまた無念のうちに散るか。大抵は相手と対峙した瞬間に分かってしまうものだが、例外もある。その奇跡に賭けよう。
…
ふざけすぎた。とにかく、ある程度メンタルが持ち直し(休職中)、何かしないと落ち着かないフェーズに来た私は3月中旬に突然マッチングアプリをインストール。戦乱の地へと足を踏み入れた。
メインはwith、サブとしてpairsの二刀流。個人的に使いやすかったのはwith。マチアプといえば、のスワイプ式ではなく、普通におすすめや検索結果から選んでいく方式なのが良かった。あとは性格診断(恋愛における行動パターンなど)による相性判断で相手を探せたり、興味がある話題をタグ登録(コミュニティ)できたり、機能としても面白い。
気になる相手を探して、いいねして、マッチして、メッセージして、会う。この流れを並行して繰り返すわけだが、アプリ上で行う作業は時間にして全体の半分以下だろう。もちろん人によるだろうが、私の場合はメッセージ上である程度親しくなったらLINEに移行してしまったからだ。実際に会っている間アプリは開かないわけだし、ある程度人数が絞れてくれば新規の相手を探す必要がないため、LINE上で完結してしまう。貪欲になれば延々と手駒を増やすこともできるが、そんな気力はなかった。
そうなると、必要なのはとにかく顔を売ることになってくる。就活で言えば合同説明会に赴いて気になる企業のブースを片っ端から訪ね、企業紹介を聞き、最後のアンケートで担当者に大学名と氏名をアピールするようなものだ。マチアプ界では足跡やいいねを残すことで、マッチ率を上げるということになる。
合同説明会は詳細な絞り込みはできなくとも、広く浅く様々な…もしかしたら想定外の優良企業や魅力的な業界を知ることが出来る絶好の機会であり、その場で収穫がなくとも決して無駄足ではない。後日、考えてもみなかったタイプや手が届かないと思っていたスペックの相手からいいねが返ってくるかもしれない。これまでの偏見を打ち破って惹かれる人ができるかもしれない。シンプルに、世の中色々な人がいるなあと勉強になるかもしれない。会場ではパンフレットだけ貰って、家に帰ってからホームページをじっくり読み込むこともあるだろう。アプリにはブックマーク機能もあるので、いいねが尽きている間に保存しておき、ふいに見返してそこから発展することもある。
要するにアプリが提供してくれる機能はせいぜいマイナビの企業検索と合同企業説明会の開催で、それ以降のプロセスはアプリの手を離れて個人の行動力に任せられてしまいますよ、という話である。どこまでも出会い系の名の通りであり、交際ましてや結婚までをサポートしてくれるサービスではないのだ。「マッチング」以上でも以下でもない。そんなことは皆わかっていると怒られそうだが、こと私においては理解しきっていなかった。登録すればなんとなく恋人ができるんだろう。そう思っていた。
本当に恋人が欲しかったのかも怪しい。そもそも、人生で好きな人というものができたことがない。初恋とは何か。恋愛感情とは何者か。そのレベルだ。にわかにメンタルが回復し、行動意欲が芽を出した急発進の産物がマッチングアプリへの登録だった。前から頭にあったものの一つで、手軽に始められるから。それだけの理由で白羽の矢が立った。友人から話は聞いていて、事前知識もある。お手軽アクティビティである。
そんなこんなで下心にも及ばない半端な迷惑ユーザーとして活動しおよそ2ヶ月、もはやアプリはiPhoneのストレージ潰し、窓際社員になっている。彼氏と呼ばれるポジションの人間は獲得した。3000を超えるいいねを獲得し、承認欲求も満たした。(人生初のマルチにも遭遇し、zoom会議に偽名で潜入して心が踊った。)だからなんだと言うのだ。なんの意味があるのだろう。ここまで書いておいて、心の整理がつかない。私に恋をください。人を愛せずに死ぬのだろうか。